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新書のご案内

「若者論」を疑え! (宝島社新書 265)

宝島社
¥ 756
平均評価:

購入者の感想です

若者論に関する基本書(2008-05-29)

「少年犯罪は凶悪化している」「ケータイやゲームは有害である」「ニートは自己責任である」等々、若者に関する主張がマスコミで報じられることがありますが(主に「識者」ぶった人によって)、著者はそういった考えは統計や研究に基づいたものではなく、根拠の無い単なる思い込みだとしてバッサバッサとぶった切っていきます。

少し前に出版された『戦前の少年犯罪』と同じような趣旨の本ですが、扱うテーマが犯罪だけに限らず多岐に渡っていて幅広い知識が得られるし、その割には新書ということもあってコンパクトにまとまっていてかなり読みやすく、著者自身が本書を「若者論に関する基本書」と位置づけているのも頷ける内容です。これで1984年生まれだとは相変わらず凄い。
また、巻末のブックガイドも◎。

文体や個別事例への踏み込み方は著者自身のブログの方が面白いと思うので、本書を気に入った人はブログも読んでみると良いんじゃないかなあと思います。

「オリジナリティ」って言うな!(2008-05-23)

 『「ニート」って言うな!』所収の後藤の文章が印象に残っていたので、本書の刊行を知って早速読んだ。インチキ若者論への解毒剤、またはワクチンとして非常に有効だと思う。後藤は東北大で都市・建築学を専攻する院生だが、84年生とは思えないくらい成熟した視線の持ち主だ。
 ピンで勝負するには知名度の低い後藤の本を出すにあたって、たぶん編集者の判断だろう、序文代わりに巻頭に本田由紀(東大准教授)との対談を置いている。また1・2章の後に別ライターによる「若者のリアル」という取材記事が挟まっている。
 本田は『「ニート」って言うな!』での縁もあって対談を引き受けたのだろうが、しかしこれ、あまり愉快じゃなかった。本田は後藤の仕事に敬意を払いつつも、「すでにいろんな論者が指摘していることを、より細かく、言説に即して検証」するだけの「モグラ叩き」で、「オリジナリティ」に欠けるのではとツッコミを入れている(p24)。対して「私は、(中略)『元から断ちたい』というところがある」(p29)、と。
 しかし言っちゃ何だが、グローバライゼーション下での競争激化(p31)だとか、「権力や資本」(p32)を持ち出す本田の議論だって「すでにいろんな論者が指摘している」し、そんなに「オリジナリティ」豊かとも感じられない。「元から断つ」というような革命幻想よりは、むしろ後藤の「負ける戦いを続けている感じですが、統計を出しながら、『一面的な見方が間違っている』という思考が少しでも広がるようにと思っています」(p27)という言葉や、「私は『武器屋』」(p45)という自己規定のほうに、私はむしろ共感する。「モグラ叩き」で何が悪い?

著者独自の根拠があいまい(2008-05-06)

この本の長所
1.若者論について、主に通俗的、政治的に保守な見解について、それなりの根拠を持って異を唱えているところ。この本の説が正しいかはさておき、通俗的、政治的に保守な見解を信奉している人にとっては新たな視座が与えられて自分で考えられるようになろう。
2.本田由紀さんとの対談はとりわけ面白かった(特に本田さんのツッコミが良かった)。
この本の短所
著者独自の根拠があいまいなところが散見されるところ。誰それのこういう研究があるから正しいというだけでは読む側としては著者の説に軍配は上げにくいであろう。
結論―長所星5つ、短所で星1つ減らして(難しいかもしれないが、著者独自と思われる見解が見たかったので)星4つ。

「根拠のない若者論」が政策や教育に影響してしまう、という危険性(2008-04-17)

キレやすい、やる気がない、昔はこうではなかった…。昨今、飛び交う数々の「若者論」。それらは、教育や政策と言ったものにまで影響を与えつつある。しかし、それらの言論を検証すると、多くが根拠がない、根拠の薄いものである。そして、それらによって出来てしまう問題について綴った書。
本書は、1章で凶悪犯罪などの統計データを元にした考察。2章で、ゲーム・ネット有害論、3章でフリーター・ニートなど労働問題の検証を行い、4章でまとめる、という形を取っている。
著者はネット上で活動を行っており、それを見慣れている人には少々、突っ込み方が足りないと感じるか思うが、「若者」を巡る言説がコンパクトに整理してまとめられており、「若者論」の大まかな流れ、構図というものを整理するのに良いのではないかと思う。無論、著者の活動を知らない方には、本書でも十分に考えさせられるかと思うが。
「今の若者は…」というのは、太古の昔から言われ続けてきたことであり、それがあること自体は今に始まったことではない。それが「ただの愚痴」で済んでいるのであれば、何の問題もない。ところが、現在の日本では、その「根拠のない若者論」が一人歩きし、それが政策や教育現場に影響を与えるようになってしまっている。「根拠のない若者論」による政策や教育というのは予算や時間を大きく損なうだけでなく、本当の問題への対応を遅らせてしまったり、差別など別の問題を作り出してしまう結果につながりかねない。それこそが問題である。
本書は「若者論」を題材にしているわけであるが、本書で訴えられいることは若者以外について考える際にも十分なヒントとなると思う。

「若者論」をこそ分析せよ!(2008-04-10)

最近の若者を憂う言説は巷に溢れている。もはや最近の若者は理解できない、壊れているというのは疑う余地などない真実であって、どうしてそんな若者が凶悪化、怪物化してしまったのかという原因についてあれこれ語られる。

…でも本当にそうだろうか?と疑問を抱いたことはないだろうか。そのような人、あるいは今まで疑問をまったく抱くこともなかった人にこの本は読んでいただきたい。

原因分析はおろかそもそも大前提となっている若者が壊れているという事実認識自体がおかしいのではないだろうかという素朴な疑念は抱いたことはないだろうか。つまり、「若者論」を分析するにはそもそもの事実認識の部分と、原因分析そして派生としての処方箋とさまざまな観点から分析しなければならない。そして大概の「若者(批判)論」は、事実認識がおかしく、原因分析がおかしく、そして処方箋もおかしいということをこれでもか、これでもかと証拠提示、集めている著者が「若者論」に一般化して分析しているのが当著である。

「若者論」そのものを分析しているので、その具体例(名)についてはあえて匿名扱いをされているようだが、各章ごとにあげられている豊富な参考資料を読めば該当者(作)が実在することはわかる。それだけでも最近の若者はといいつつ個人的な体験や、あるいは稀に起こる事件を過度に一般化して「若者論」を妄想気味に語る「若者論」とは一線を画している。

それでも物足りないもっと個別具体例についての批判が知りたいというのならば、あとがきで物されているように著者が主宰されているブログをお覗きいただいたい。

冒頭に収録されている本田由紀東大准教授との対談が本全体のガイドになっているのも親切なつくりとなっている。
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