購入者の感想です
ネットとメディアの事件史(2008-11-21)

ブログに代表されるネット世論と、既存メディアを中心とする実社会世論とのかかわりを述べる。毎日新聞大炎上事件や各種の世代間対立問題など、タイムリーな話題をよくまとめてある。が、リアルタイムで経験している世代にとっては、特に新味は無いかも。要するに、ネットと世論の間に発生したイベントを取り混ぜてみた印象。連載だからしょうがないか。
団塊世代あたりの人がブログなんかを始める前に読むとよい入門本になると思う。
私の知らないネットの今を教えてくれる(2008-11-03)

インターネットで今起こっている事象を追い続けるジャーナリストの最新著作です。
著者は「毎日、300前後のブログやニュースサイトを閲覧し、1日のうちにおおむね1,000から1,500の記事やエントリーを読んでいる」(242頁)と記します。個人ブログを持っているわけでもなければ、他人のブログも思いついたときに数件のぞいてみる程度の私には、著者のチェック量たるや驚異的な数字に見えます。
そのネットの世界で、既成メディアの誤りを正すことさえある、実に濃密な議論が生まれている様子を著者は教えてくれます。おそらく高度なネットユーザーなら「何をいまさら」と思う事柄が多いのかもしれませんが、ネットで今何が起きているのかほとんど知らない私の無知を埋めてくれるには十分だと思います。
しかし一方で著者は、「ネット論壇の集合知は、世論調査や新聞の社説、テレビのコメンテーターの言説といったマスメディアのような装置では表出しない。そこで何の議論が行なわれているのかを知っているのは『参加している人たちだけ』という現象が起きてしまう」(237頁)と指摘しています。
第6章では共産党の志位委員長が雇用格差問題一点に絞って行なった国会質問の模様がユーチューブで3万回、ニコニコ動画で一万回閲覧されたとあります。既存のメディアでは割愛されることの多かったこの国会質問をネットがこれだけ広く知らしめたということを伝える事例として取り上げられているようですが、私の目にはこの合計4万回という閲覧数が既存のメディアに比べればなんともささやかな、「たったの4万回」にしか映りませんでした。事実、私の職場の30代の部下たちは、つい先日私が教えるまでニコニコ動画という動画共有サイトの存在を全く知らなかったくらいです。
既存のメディアに比肩するだけの影響力を今後どこまでネット論壇が持ちうるのか、注目していきたいと思います。
特ダネ期待しちゃいました…(2008-11-02)

インターネットに興味のある人であれば
そこそこ知っているようなネタが多いような気が…
もっと突っ込んだ、深く掘り下げた内容を期待してしまいました。
一般の人にもよく知られている事件の
裏の見方や隠された事実を暴いてくれてることを読者は望んでいるのでは?
少し物足りなさを感じてしまいました。
ロスジュネ時代の新しい論壇(2008-10-13)

ブログという誰もが簡易に参加できるオープンな場で
活発にとりかわされる議論。
その場を主に構成する1970年代生まれの「ロストジェネレーション」世代の人々と
既存のトップダウン式マスメディアとの対立状況や現状を示した本。
文藝春秋刊「諸君!」に連載されている「ネット論壇時評」の改稿です。
ブログ論壇を構成する人々と、既存マスメディアの論の対立として
著者が重んじているのは、ライブドア問題、小泉首相、毎日デイリーニューズです。
特に毎日デイリーニューズの不信な記事の掲載を
ネットなどの抗議活動によって訂正に追い込み、広告を失わせた「勝利」は
詳しく書かれています。
他にも、あらたにすやウィキペディア、秋葉原殺傷事件、
政治家たちが登場したニコニコ動画やユーチューブなどを例にあげ
世代間差と対立構造を描こうとしています。
問題点としても、衆愚化やリテラシーの差とともに
社会的弱者層であるロスジェネ世代が中心であるために
現実社会での影響の小ささなど、世代問題も挙げています。
著者がチェックしているブログが多く、興味深かったです。(リストつき)
きっと1年後には陳腐化しちゃうんだろうな・・・(2008-10-12)

遠くは「塩爺」近くは「のまねこ騒動」。どちらも遠い過去のような気がする。定期的にネタを投下しては再炎上させてくれる毎日低俗記事問題はともかく、ネットの騒ぎなんて長くて数ヶ月。本書は「諸君」でのこの1年間の連載を転載したものなので、現時点ではそう色褪せた感はないが、来年の今頃読んだら、「あのころは…」という印象になってしまうかなあ。
しかし、著者の主張には多くの点で違和感を感じた。「ブログ論壇が既存の言論に対抗する公共圏になる」という著者の論は果たしてそうか?著者はネット言論の主役をリアル社会で失敗している「ロストジェネレーション」と見るが、果たしてそうか?巻末で著者が紹介するたくさんのブログのうち、池田ノビーやら切込隊長、dankogaiほか専門職、研究職など多くはないが自分が知るブログの主の多くはリアル社会で成功した人たちだ。本当にいいブログも多いが、てめえの自慢をしながら、人を叩いて自分のアフィリエイトを上げることに熱心、というせこい手合いも少なくない…。自分の成功は棚に上げて社会やマスコミを批判する連中が「ロスジェネの声」だとはとても思えない。一瞬の竜巻は起こせても、持続的にリアル言論に対抗するなんて無理だ。
また、「小泉の郵政選挙勝利はマスメディアよりネットの言論が強いことを証明した」と著者は言うが、そりゃ、閉じたネット社会から見てたから、影響力が強いように感じただけでは。マスコミも野党より与党の表出量の方が断然多かったし、都市部の選挙戦を直に取材・分析した立場から言えば、主婦・高齢者などネット論壇のリーチが及ばない人の自民支持もいつにないほど高かった。
とまあ、ネット論壇への肩入れが強いが、ネットウォッチングの第一人者らしく、それなりの分析は読ませ、考えさせてくれる内容。この1年のネット社会のトピックを振り返るにはいい本だと思う。