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新書のご案内

北京―皇都の歴史と空間 (中公新書 1908)

中央公論新社
¥ 882
平均評価:

購入者の感想です

比較的ハードな北京入門書(2008-04-28)

 北京という都市を、多様な角度から眺めた力作。
 市内観光案内から、歴史的な経緯、都市論、「単位」の変容、住居の変化、オリンピックなどが扱われている。出版界の中国商戦もいよいよ熱くなってきたという観もあるが、本書のような、比較的内容がしっかりしたものにお目にかかることは少ない。

 ありきたりな歴史解説よりも、やはり現代の北京事情について書かれた後半部分のほうが楽しめた。第4章が特に面白かった。いまいち理解しにくかった「単位」についても、大まかなイメージが掴めたのは収穫だった。
 中国の建国以来、人民の生活は全て「単位」が丸抱えしていた。「単位」においては、職場から、住居、学校教育、病院、商店、映画館(!)などに至るまでが一つにまとめられて、人々はその中に暮らしていた。
 その単位が、ケ小平の改革以後、解体されていく。今までは「単位」が担っていた一つ一つの機能は、市場経済に委ねられることとなる。そのほうが効率的だからである。土地や社会的サービスは、商品として流通し、「単位」は意味をなさなくなっていく。こうして、「職場が同時に近隣であることが当たり前であったものが、隣は何をする人ぞの世界へ」と、北京は変化している。『長江哀歌』を観たときも思ったが、中国は未曾有の変化の只中にあるのだ。
 それらと同時に、資本主義と社会主義の間に橋をかけるような存在として、居民委員会などの中間集団についても紹介されていた。何とも、社会学的。

北京の歴史と未来を知る(2008-03-12)

 2008年に五輪の開催される隣国中国の都である北京。
 本書では意外にありそうでなかったこの都市の概説である。前半ではその歴史のみていく。北方系民族との相互交渉の中で生まれ、明や清の手によって発展していく経緯が理解できる。
 続いて近代、そして未来におけるその開発、発展について実に詳細に述べている。経済発展の著しい中国の首都としてどう発展していくか、注目されているが、本書はそのための見通しを提供してくれる。

「政治都市」の肖像(2007-12-05)

 上海などに比べるとありそうであまりない、北京を題材にした都市論。本書は一種の社会主義論という性格も持っていて、中国社会主義を特徴づける独特の存在「単位社会」はもともと日本の炭鉱町や企業城下町と同根のものであるが、日本との違いは戦時動員体制の強い影響下でそのスタイルの完成をみた点だ、という指摘などは興味深い。
 本書でも紹介されているように、1949年に中華人民共和国が成立した当時、首都北京の都市開発をめぐって、旧城内を開発して政官庁や宿舎を建設するという案(すなわち実際に採用された方式)と、梁思成と陳占祥により提案された、旧市街地の西側に新都心を建設し、旧城の街並みは歴史的遺産としてそのまま保存する、という案の間で激しい論争があった。本書では、二つの都市計画案の対立は結局のところソ連型の社会主義的都市観とと英・米型の都市観の対立であり、それぞれに一長一短ある、というような「中立的」なまとめ方をしている。
 それに対し、例えばピュリツァー賞を受賞したイアン・ジョンソンの『ワイルドグラス』では、近年の行政主体による都市再開発=住民の強制立ち退きラッシュに疑問を投げかける視点から、50年以上前の段階で長期的視野に立った旧城の歴史景観保護を主張した梁思成の先見性が高く評価されている。
 これからオリンピックにかけて「北京論」もいっそう盛んになるだろうが、その中でこの梁思成のまぼろしの都市計画案は、この類まれな「政治都市」に対する論者のスタンスを示す一種のリトマス紙の役割を果たしていくのかもしれない。そんなことを本書を読みながらふと思った。

中国を社会的視点からみる本(2007-10-01)

 中国の都市を、経済的視点からではなく、社会の視点からみるという、ユニークかつ奥の深い本です。中国経済に関する論述は花盛りですが、元々中国は壮大な歴史国家であり、表層的な捉え方をすると本質を見誤りがちです。中国の都市空間を歴史的にみるというこの本の試みは非常に面白いし、日本人と中国人の大学教授の共著により、内容の深み・広がりも感じました。

 北京の行政の中心部をどこに作るか、を中国の建築家とソ連の専門家が論争する場面、またその影に毛沢東がいた、という話など、エピソード的な話も興味深いものでした。

 私には大変勉強になりましたし、お薦めできる本だと思いました。

 
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